第25章 フリコ ト カコ
「今度はちゃんと、護るんじゃぞ」
「!」
その言葉に悲しい表情を浮かべて笑う。
「わかってます」
梨央は頭を下げると一番隊舎を出て行った。
◇◆◇
その足で一軒の屋敷に到着する。
「相変わらず大きいな」
門を潜って扉の前に立つと呼び鈴を鳴らす。
「…留守?」
しばらく待っても誰も出て来る様子がないので裏手に回ると一人の老人が縁側に座り、茶を嗜んでいた。
「朽木隊長!」
「おお、零番隊長か」
広い庭では透き通った水の池の中で色鮮やかな鯉達が元気に泳いでいる。餌をやった後だろうか、所々に餌が散らばっていて、時折鯉達が口をあけてパクパクと食べている様子が窺えた。
「呼び鈴を鳴らしたのですが…」
「それはすまんかったな」
六番隊隊長である朽木銀嶺は手入れが行き届いた庭を静かに眺めていた。
「お休みのところ屋敷にまで押し掛けて申し訳ありません」
「どうした?」
「今日中にお渡ししたい書類があったもので…」
「構わん、ご苦労じゃった」
銀嶺は書類を受け取る。
「良い天気ですね」
「鯉も嬉しそうに泳いでおる」
「お孫様は今日はいらしてないのですか?」
「白哉なら…ほれ、あそこじゃ」
銀嶺の視線を目で追えば、紫色の髪をした女性が黒髪を後ろで一つに束ねた若き少年をからかうようにして遊んでいた。
「はぁ…またあの人は…」
どうやら二人は鬼事をしているようだ。
女性の方は梨央と同じ隊首羽織を着ている。
呆れて溜息を吐いた梨央は女性の名を呼ぶ。
「四楓院隊長!!」
「おお、梨央ではないか!どうした?」
「どうしたじゃありません!!息抜きも必要ですが砕蜂を困らせるようなことだけはやめてください!!彼女が可哀想です!!」
「わかっておる!!」
本当にわかっているのか、楽しげに笑う彼女は後ろから追いかけてきた白哉をからかうようにして、また鬼事に戻ってしまった。
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