第2章 悪夢のはじまり
「少しくらいの“お遊び”は許してよ」
「お前の“お遊び”は度を過ぎんだよ」
「危険なほど燃えるじゃないか」
「馬鹿か。わざわざ危険を冒してまで面白さを優先したら今度こそ…」
「大丈夫。今度は気をつける」
「(“気をつける”ねぇ…。その言葉に何度ヒヤヒヤさせられたか、こいつは分かってねぇんだろうな…)」
前科があるからこそ、蒼生は大事な妹が自ら危険な道に首を突っ込もうとする行動は素直に“頑張れ”と背中を押してやることはできなかった。
けれど梨央の性格を誰よりも知っている蒼生は諦めざるを得なかった。
「派手に暴れなきゃ好きにしろ」
「てっきり反対されるかと思った」
「反対してほしいのか」
「やだ。私の愉しみが減る」
「(頑固め…。)」
蒼生は深く溜息を吐いた。
「ただし四十六室の逆鱗には触れるな」
「それは重々承知してる」
「査問にでも呼び出されると面倒だ」
「あんな場所、二度と行きたくないけどね」
「あの連中は梨央チャンを毛嫌いしてるっスからね。もしも次、捕まるようなことがあれば…今度こそどうなるか判らないっスよ」
「私もあの連中は嫌いだからお互い様だな。だが琉生の言葉には肝を命じておこう」
「本当に気をつけてね〜」
「キミ達は心配し過ぎだ。それに“もし捕まったら”の話でしょ?大丈夫、簡単には捕まらない。それに今は自由なんだ。身を拘束する呪具もないしね」
手首に視線を落とすと、拘束されていた時に付いた跡が薄っすらと残っている。
「(まるで呪いのようだな。)」
解放されて数ヶ月経つと言うのに
忌々しい跡は消えない
「チッ…」
梨央は顔をしかめ、苛立つように舌打ちをした。
「それでどうするの?」
「流祇流どうするも何もないわ。あの女は死刑よ。今すぐに首を切断して殺しましょう」
「完全にアウトな発言だけど待って。実はキミ達に頼みがあるんだ」
「頼み?」
「何スか?」
「これから先、どんな仕打ちを受けても私を助けないでほしい」
その提案に全員が驚いた顔を揃える。
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