第24章 セカイ ト ヤクメ
「そんな話をする為に会いに来たんじゃないよ」
「では何の為に会いに来た」
「キミの目的を聞く為だ」
鋭い眼光を向ける。
「何故キミは虚圏にいる?」
「命令だからだ」
「命令?」
「虚圏で起きた全ての出来事を見聞きし、報告しろと命じられている。あとは“危険人物の監視”だ。その為に此処に来た」
「誰に命令された」
「答える義務はない」
「危険人物とは誰のことだ」
「……………」
「キミはそいつの為に動いてるのか」
何を聞いても沈黙を続ける。
「質問を変える。そいつの目的は何だ」
「……………」
「…それも答えられないか」
肩を竦め、溜息を吐いた。
「この世界は偽物に過ぎない」
「!」
「現世も尸魂界も虚圏も全て…壊れて消えるべきだ。そして新たな世界へと創り変わる」
「何を言っている?」
「正しい世界に還すんだ。“本来在るべき姿の世界”に」
「本来在るべき姿…?」
「運命を壊し、理を正す。偽物の世界は消え、“あの方”の望む世界へと生まれ変わる」
「だからそいつは誰だと聞いて…」
「偽物のお前が罪を犯したように」
「!?」
名も亡き人形の発した発言に驚き、目を見開いたまま固まる。
「偽物…?」
「初めて会った時から異常だと思っていた。お前から感じる違和感。そして…その瞳の奥に隠された“もう一つの狂気”」
「!」
「お前、自分の中に何を棲まわせてる?」
「急に何を言い出す」
「それが違和感の正体かは明白ではないが、恐らくお前は“それ”が原因で自分自身でも気づけなかった狂気に気付いたんだろう」
「………………」
「“それ”はいつからお前の中にいる?」
「答える義務はない」
「お前は一体、何者なん──」
「それ以上深く聞くなら…斬るぞ」
梨央の青い瞳が暗くなる。
「(それだ…お前から感じた違和感は。)」
「まだ死にたくなかったらその口を閉じろ」
「……………」
「興が逸れた」
怖い顔を浮かべた後、そう言って踵を返し、その場から立ち去る梨央を名も亡き人形はジッと見据えていた。
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