第23章 タタカイ ト ブキミナコエ
「…完敗だよ、清々しい程にな。吾輩の体には力が満ち、心には勝利の意志が満ちていた。いつ何時打ち込まれようと受け切り打ち返すという確信があった。油断は無かった。只、見えなかった…強いな坊や(ニーニョ)」
「…そんなこと無えよ」
「…吾輩は十刃に戻りたかった」
ドルドーニは静かに本音を語り始める。
「…十刃は藍染殿の忠実な下僕だ。そして藍染殿はその十刃を戦いの道具程にも思ってはいないだろう。
それは解っている。だか一度高みに立った者はその眺めを忘れられぬものだ。あの場所は堪らなく心地良かった。吾輩は全力で坊やを倒せば藍染殿に再び認められ十刃に返り咲くことができるやも知らぬと考え、その為に坊やに虚化を促した…そしてその心は────……」
「!!」
ドルドーニは刀に触れる。
「今も変わらぬ!!!」
「!!」
それを見た梨央は刀を構える。
「何を驚く?事情も知れぬ敵を癒すということは反撃は覚悟の上でのことだ!違うかね?」
「やめろ!まだ動ける程には回復してねえだろ!!」
「傷とは気構えに負うものだよ坊や。戦う意志さえ回復すれば体の傷など取るに足らん」
「…ほら、言っただろ。中途半端に生かすからこういう事態を招くんだよ」
「!」
「やっぱり殺すべきだ」
刀を手に、ドルドーニに近付こうとする梨央は殺気を放ち、怖い顔をしている。
「待ってくれ梨央!」
「彼にはまだ戦う意志がある。
つまり…死ぬ覚悟もあるということ」
「今度はお嬢さんが吾輩を愉しませてくれるのかね」
「存分に楽しめ。そして後悔なく逝け」
ドルドーニがニヤリと笑う。
「“罪人に死を”」
梨央が瞬歩でドルドーニの前から消える。
「!?」
その速さにドルドーニは目を見開き驚く。
「(なんという速さ…!!)」
ぞわりと身の毛がよだち、背後に気配を感じた途端にドルドーニは片足を振り回す。
「何!?」
だが本気の横蹴りは縦に刀を構えた梨央によって見事に防がれてしまった。
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