第23章 タタカイ ト ブキミナコエ
激戦の末、虚化した一護に敗北したドルドーニは膝をつき、倒れ込んだ。
梨央は傷を負っている一護の許に歩み寄り、声をかける。
「大丈夫?」
「ああ」
「傷だらけだ」
「こんなの大した傷じゃねえよ」
「…彼は死んだ?」
「殺してねえ」
「甘いなキミは」
「…殺す必要はねえだろ。もう勝負はついた」
「中途半端に生かされることが敵にとっての一番の屈辱だって解ってる?」
「………………」
「敵を手に掛けるのに私情や同情は必要ない。その余計な感情が戦闘に影響する。自分の甘さが原因で敗北に繋がる場合だってある」
ドルドーニに目を向けたまま、どこか辛そうな表情で梨央の話に耳を傾けている。
「でも…敵に慈悲を掛けられても容赦ない私と違ってキミは優しいからね、そういうところ、素直に羨ましいと思う」
「!」
梨央は優しく笑んだ。
「ネル」
「なんスか?」
「彼の傷を治せる?」
「任せろっス!」
「どうやって治すんだ?」
「ネルのヨダレには弱いけど治癒能力があるっス!」
「ヨダレ…」
「マジか」
「だからこうして…」
口の中に手を突っ込んだネルは突然大量の涎を吐き出す。
「ホぎゃああああああああ!!!」
目を覚ましたドルドーニはネルの涎を顔面に受け、驚いて飛び起きた。
「なにっ…なにを…!!
何をしている貴様あああ!!!」
「なにって…ヨダレかけてるっス」
「見ればわかるそんなことは!!何故吾輩にヨダレをかけているのかと訊いているのだ!!!」
「うるせえなあ、何騒いでんだドン・パニーニ」
「ドルドーニだ!!!
何だその美味しそうな名前はっ!?」
「名前を間違えるなんて失礼だよ。
ねえ?ドン・パニエさん?」
「だからドルドーニだと言っているだろう!!!というか貴様も当たり前のように吾輩の名前を間違えているではないか!!!」
「ネル、もういっちょヨダレ」
「了解っス!」
どぱあっ
「イヤ───!!!!」
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