第23章 タタカイ ト ブキミナコエ

「瞬時に気配に気付き攻撃を仕掛けるのは見事。だが防がれてしまったら意味がない」



ニヤリと笑い、仕返しと言わんばかりに刀でドルドーニの足を弾き返す。



「ぐっ！」



軽く吹き飛んだドルドーニの額に汗が滴る。



「(何だこの少女は…)」



愉しげに歪む表情と悍ましい雰囲気。ドルドーニは警戒心を張り巡らせる。



パチンッ



梨央は指を鳴らす。その音が合図となり、上から大量の結晶が降ってきた。



「！！」



細長い結晶は獲物を捉えたかのようにドルドーニに向かって一直線に落ちる。タイミングを見計らい、上手く躱し続ける。



「梨央!!」



一護が制止するように声を上げるが、戦いを楽しんでいる梨央の耳には届いていない。獲物を失った結晶が地面に当たり、砕け、そのせいで周囲は煙で包まれる。



「(藍染様が言っていた。死神の中に一人だけ、別格の力を持つ少女がいると。そうか…貴様がその死神か！)」



白煙で視界が見えず、ドルドーニは気を引き締める。だが…彼も気付かぬうちに、狂った笑みを浮かべた梨央が背後に現れ、ドルドーニを思いきり蹴り飛ばす。



「がはっ！！」



白煙の外に弾き飛ばされたドルドーニは何とか着地するも、苦痛で顔をしかめる。



「(人並外れの戦闘能力、桁違いの強さ、全てに於いて異質な存在…)」



すると白煙が消え、周囲が開ける。



「(あの少女は危険だ──。)」



ドルドーニの視線の先にはどこか狂った笑みを浮かべる梨央がいる。そしてゆっくりとドルドーニに近付こうとする梨央の腕を…一護が掴む。



「梨央…もういい。決着はもう着いてんだ。だから…俺の声を聞いてくれ」



「！」



落ち着かせる声に、暗くなっている青に光が戻る。そして短く息を漏らす。



「(“夢中になり過ぎた”)」



「行き給え」



「「！！」」



「貴様達の勝ちだ」



ネルを抱えた一護と共に瞬歩で出口まで移動する。一護は何も言わず先に進んだ。梨央は後ろを振り返らず、目線だけをドルドーニに向けた後、自分も一護の後を追った。



「…さて…どうやら間に合った様だ」



そこには葬討部隊が待ち構えていた。



next…