第21章 オリヒメ ト ユウカイ
完全に閉ざされた穿界門を見て一護は顔をしかめる。その場には今、梨央と一護しかおらず、先程よりも空気が重たく感じる。
「彼女の命を何だと思ってんだ…」
眉を下げ、悲しげに瞳を揺らす。怒りと悔しさから握り締めた手が震える。
「(きっと“コレ”が、正解だ──。)」
拳を解き、一護の側に歩み寄り、しゃがみ込む。顔を上げた一護が不思議そうに見る。
「梨央…?」
「(だから私は、『選択』する。)」
微笑み、その『選択』を告げた。
「ねぇ、いっちー。
織姫ちゃんを助けに行こう」
「!」
「(そう…コレが『正解』。この選択が…彼女の命を救えるはずだ。)」
「行くって…どうやって?」
「私は、虚圏に行く方法を知っている」
一護は驚いた顔を浮かべた。
◇◆◇
その日の夜───。
「しばらく夜遊びに出掛けるよ」
《夜遊びねぇ…。》
「塔の中にお姫様が囚われてるんだ。
王子様と一緒に助けに行って来る」
《…その女、生きてるのか?》
「珍しい」
《何が。》
「キミがそんなこと言うなんて」
《…もし、生存率がゼロに等しければ棺桶で戻ってくる可能性だってある。》
「棺桶って…」
《そうなったらお前、泣くだろ?》
「泣かないよ」
《でも何も出来なかった自分を責めて、泣くだろ?》
「!」
《無力な自分を許せないお前は、心が壊れて、精神的にダメになって…泣くだろ?》
《俺はな、梨央。あの時みたいに全てが壊れたお前を見たくねえんだよ。》
「蒼生くん…」
《だからその女が死んぢまってたらお前は…また、あの時みたいに───》
「大丈夫だよ」
《!》
「彼女は生きてる。私はそう信じてる。それにね蒼生くん。私はもう、あの頃みたいにただ泣いて壊れただけの子供じゃない。今度こそ助けてみせる。目の前で…誰かを失うのはもう…いやだからね」
《…………………》
「彼らならきっと運命に抗ってくれる。織姫ちゃんは必ず取り戻す」
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