第21章 オリヒメ ト ユウカイ
「(違う。彼女は私達を裏切ってなんかいない。破面側に着いて行かなくてはならない理由があった。そうとしか考えられない。)」
織姫の裏切りを彼女は信じなかった。だからこそ、山本の言葉に抗議の意を唱えた。
「彼女を助けに行きます」
《………………》
「今ならまだ間に合う」
《ならぬと言うた筈じゃ。》
「総隊長にとって彼女の命は石ころ程度の価値としか思っていないのでしょう?」
「おい梨央…」
言葉が過ぎたのか、恋次が慌てた様子で梨央を制止させようとするが…
「たった一つの命なんです。その命が消えるかも知れないと解っていて、わざわざ見捨てる選択肢を選ぶと思いますか」
全員が驚いた表情でこちらを見ている。怒りたくて怒っているわけではない。ただ…大切な友人の命を蔑ろにして思えたのだ。
《今回ばかりはいくらお主の頼みでも聞き入れる訳にはいかぬ。》
「…納得いきません」
断固として首を振らない梨央に山本は小さく息を吐き、静かな声で言う。
《お主の気持ちは痛い程解っておる。》
「……………」
《じゃが今回ばかりはお主に折れてもらうしかないんじゃ。》
「っ…………」
ギリッと歯を噛み締め、悔しげな表情で黙り込む。すると眉を下げたルキアが告げた。
「…恐れながら総隊長殿…その命令には…従いかねます…」
《…やはりな──手を打っておいて良かった。》
突如穿界門が現れ、戸が開くと白哉と更木の姿があった。
「隊長…!!」
「…そういう訳だ。戻れお前ら」
「手向かうな。力尽くでも連れ戻せと命を受けている」
「…わかった。尸魂界に力を貸してくれとは言わねえ…せめて…虚圏への入り方を教えてくれ。井上は俺の仲間だ。俺が一人で助けに行く」
「…一護…」
《ならぬ。》
「──何…だと…?」
《お主の力はこの戦いに必要じゃ。
勝手な行動も犬死にも許さぬ。》
《命があるまで待機せよ───以上じゃ。》
「…一護…梨央…」
全員が穿界門を潜って尸魂界に帰還して行った。
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