第20章 モクテキ ト オウケン
《中々に難儀しておるよ。何せ大半が禁踏区域じゃ。隊長格ですら内部を知る者は殆どおらんのじゃからの。》
「…前置きはいいっす総隊長、本題を」
《…そうじゃの。》
《…大霊書回廊の捜査を担当しておった浮竹が先日その中で妙な痕跡を発見した。》
《崩玉とそれに付随する研究資料にのみついておった既読記録が一度だけ藍染の消える二日前に崩玉とは全く無関係な書物についておったのじゃ。》
「───………それは……?」
《『王鍵』》
「!?」
日番谷は驚いて目を見開いた。
「(“王鍵”…だと?)」
何故その存在を奴は知ってる?
「…王鍵…って何ですか?」
「『王家の鍵』よ、文字通りね。尸魂界にも王家ってのがいるのよ。王っていっても尸魂界のことは四十六室に任せっきりで一切干渉してこないから実感ないし実際あたしも隊長も直接見たことは一度もないんだけどね」
《然様、王の名は『霊王』と言い、尸魂界にあって象徴的でありながら絶対的な存在。その王宮は尸魂界の中の更に別の空間に存在し王族特務…そこにおる仁科梨央を中心とした零番隊が守護しておる。》
「零番隊…」
「!」
織姫の視線に気付いた梨央はニコッと笑う。
《『王鍵』とはその王宮へと続く空間を開く鍵じゃ。》
「それじゃあ…藍染…さんはその王様を…」
《殺す。それが奴の目的じゃろう。》
《…じゃが問題は其処では無い。》
「…藍染が見たのは『王鍵』の在り処を記した本じゃない…」
《…如何にも。》
《『王鍵』の所在は王族特務から代々十三隊総隊長のみ口伝で伝えられる。故に所在を記した本など存在せん。》
《奴が見たのは『王鍵』が創られた当時の様子を記した文献────》
《奴が知ってたのは『王鍵の創生法』じゃ。》
「つまり…その創生法に問題があるということですか?」
《否、創生法ではない。
問題なのはその『材料』じゃ。》
《王鍵の創生に必要なのは十万の魂魄と半径一霊里に及ぶ重霊地。》
「十万の…魂魄…」
《そうじゃ。じゃがお主らに関わりがあるのは魂魄だけではない。》
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