第20章 モクテキ ト オウケン
「聞け──“罪深き少女”」
「!」
「この戦いを機に息を潜めていた者が動き出す」
「どういう意味だ?」
「反逆者共が仕掛けてくるぞ」
「!!」
「そしてお前が希望を託した男は絶望に呑まれ、二度と立ち上がる事はない」
「……………」
「奴に各数字を与えられた者達がお前達を始末するだろう。これは運命だ。希望に縋るお前達は敗北する」
「……運命」
顔を俯かせ、肩を揺らして笑う。
「クク…ッ」
「?何が可笑しい?」
「いや、失礼。」
彼女は顔を上げ、自信に満ち溢れた表情で相手を見る。
「キミが余りにも客観的なことを言うものだから…笑いが込み上げただけだ」
「………………」
「こちらも聞いてもらおうか」
「!」
「キミ達は私が希望を託した者に世界を救われる。反逆者共の目的が何なのかは知らない。だが、私の仲間がキミ達を逃しはしない。必ず、運命に抗ってみせる。たとえ…二度と立ち上がれない程の…深い絶望に呑まれたとしても」
諦めを知らない真っ直ぐな眼。
「キミは知らない、彼らの強さを。決してきれぬ絆を。どんな困難にも立ち向かう勇気を」
「そんなもの、必要ない」
「何故そう断言できる?」
「お前達は知らないからだ」
「何を?」
「人は裏切る。どんなに強い絆で結ばれていても、結局は自分が一番大事なんだ。お前達の信頼は、簡単に壊れる」
「壊れてもまた築き直せる」
「!」
「そのための仲間だ」
「…お前の言葉は勘に障る」
強く拳を握りしめ、苛立ちを浮かべる。
「倒れそうになっても仲間が支えてくれる。挫けそうになっても仲間が手を差し伸べてくれる。心が折れそうになったら仲間が助けてくれる。仲間とはそういう存在だ」
こちらも負けじと言い返せば、相手は無言のまま殺気をぶつけてくる。
「さて…そろそろ教えてもらおう」
刀を鞘から引き抜き、相手に突き付ける。
「キミは何者だ?」
「……………」
「答えなければ斬る」
「…“名も亡き人形”」
「それは異名か?」
「真名を口にすることは禁じられている」
「(禁じられている?)」
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