第2章 悪夢のはじまり
「高峰、あんた少しは取り乱すとかないの!?薄情にも程があるわ!!」
「ならお前はあいつが気にするタマだと思うか?今頃俺らの朝飯の準備してると思うぞ」
「気を紛らわせる為かも知れないでしょ!!」
蒼生に噛みつく詩調の怒り具合に、そろそろ本気で止めないとまずいと思った琉生が、両手を胸の前で小さく前後に動かし、二人の言い争いを止めさせようとする。
「二人とも喧嘩はダメっスよ!じゃないと普段温厚な雅クンの制裁が…」
「あんたはすっこんでなさい!!」
「もぉーほらー!雅クン!オレじゃ効果ないっスよ〜!むしろ返される言葉にオレの心がダメージを食らうだけっス!」
詩調の辛辣な言葉に心を痛めた琉生は胸に手を当てながら隣を歩く雅に助けを求める。
「一色さん。少し冷静になろう」
「あんたもよ…何で冷静なの」
雅の柔らかい口調に、あれだけ荒ぶっていた詩調がぐっと拳を握りしめ、声を押し殺しながら悔しそうな表情を浮かべる。
「怒りたくもなるでしょ。一歩間違えれば、隊長があたし達の前からまたいなくなるのよ」
「……………」
「“また濡れ衣を着せられた”のよ!!あの時と同じように不当な理由のせいで…!今回だって…」
「怒りたい気持ちはわかるよ」
「なら…!」
「でも彼女は強い」
「!」
「大丈夫。僕らの隊長を信じよう。君だって彼女がこの程度で心が折れるとは思ってないでしょ?」
「…当たり前じゃない。隊長は強いのよ。あたし達の自慢の隊長なんだから…っ」
「うん。だから大丈夫だよ」
穏やかな表情で笑む雅を見て、次第に落ち着きを取り戻し冷静になる詩調。それを見た琉生はほっと胸を撫で下ろし、蒼生は目を瞑った。
「あ〜ご飯の良い匂い〜!」
「まだ応接室は先っスよ?」
「でも出来立ての匂いがするー」
「お前の嗅覚は犬並みか」
「わんわん!」
「真似せんでいい」
霙が犬のポーズをしたのを見て、蒼生が深い溜息を漏らしながら呆れた。
「今日の朝食も当てれる〜!」
「何スか?」
「白米とお味噌、焼き魚と沢庵の漬物!」
「やべぇ…霙チャンの前世は犬っスよ」
「それでは朝食を求めてレッツラゴー!」
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