第17章 ゲンセ ト カンチガイ
「隊長?」
「いや…やっぱり何でもねえ」
歯切れが悪そうに言葉を濁らせ、再び書類に目を落とす日番谷。
「言いかけた言葉を途中で止めるのは頂けません」
「気にすんな。忘れてくれ」
「気になります。話して下さい」
「だから気にすんなって」
「私は気にします」
「…食い下がるな」
「言いたい言葉はその時に伝えてください。じゃないと…後悔します。」
ふと悲しげな表情をする。
「悪かった。話すからそんな顔すんな…」
「どんな顔ですか」
「泣きそうな顔」
「してません」
「鏡見てみるか?」
「結構です」
ぷいっと不貞腐れたように顔を背ければ、日番谷は可笑しそうに笑う。
「高峰とは…仲が良いのか?」
「高峰副隊長ですか?」
日番谷の質問にキョトンと目を丸くさせる。
「仲が良いのは確かですね」
「特別隊首会の日、お前と高峰の仲の良さを知った。親密な関係なんだろうなと思った」
「実は…これは公にはしてないのですが、私と高峰副隊長は…二卵性の双子なんです」
「双子?」
今度は日番谷が驚いた表情を浮かべる。
「帽子とマスクを使えば完全に兄にそっくりですよ。ただ性格は似てないので双子偽疑惑が浮上した事もありました」
“ちなみに見分け方は目の下の黒子の位置です”と言って、左眼の下にある泣き黒子を指差す。
「でも苗字が違うだろ?」
「深い意味はありません。零番隊を結成する時に兄だけ変えたんです。その方が色々都合が良いからと」
「そうだったのか」
「唯一似てる点は、この瞳の色です」
深海よりも輝かしい青。宇宙よりも神秘な青。彼女の瞳を見た日番谷はふと微笑む。
「お前の眼は綺麗だな」
「ありがとうございます」
少し照れ臭そうにはにかんだ。
「(何だろう…この高鳴る胸の鼓動は。)」
トクン、トクン、と優しく心臓を打つ音に不思議な気持ちになった。
「隊長の瞳も綺麗です」
「子供の頃はこの瞳の色を怖がって、ばあちゃん以外は誰も近寄らなかったけどな」
「私は好きです」
「!」
「とても綺麗な翡翠の瞳。それを私は怖がったりしません」
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