第13章 特別隊首会
「何故そう言い切れます?」
「簡単よ。だってアタシは“被害者”だもの。例え全ての罪が公になっても、馬鹿な家畜共は必ずアタシの味方でいる」
「悲劇のお姫様を演じるからですか」
「ちょっとか弱い部分を見せて助けを求めただけでコロッと騙される奴等よ?アタシの立場が危うくなっても上手く丸め込んでやればいいだけの話でしょ」
「(そう簡単にいかないと思うがな。)」
「それに悪いことはしてないんだから誰もアタシを裁けないわ。むしろアンタのお友達に危害を加えたのは無能な家畜共。罰を受けるのはそいつらだわ」
「“悪いことはしてない”…」
「そうよ!」
自信満々に答えた桃香はニヤリと笑う。そんな彼女を流歌は憐れみの交じった呆れ顔で見つめた。
「直接手を下してないアタシは無実よ!今回の件でアタシは何のミスも犯していない!証拠も残さず完璧にやり遂げてみせる!」
「必ず貴女を罰します」
「あはは!威勢だけは良いのね!でもアンタがどんなに頑張っても結果は変わらないわ!たった一つ変わるとすれば…それはアンタが死ぬっていう結末だけよ!」
「貴女こそいつまでその余裕が続きますかね。醜く歪んだその顔が絶望に染まる瞬間を楽しみにしてます」
「……………」
「真実が暴かれた後でも、そうやって笑っていられる余裕があったらいいですね?」
「ほんと…つくづく腹の立つ男」
憎しみの込もる声で言われ、冷めた眼を宿したまま、桃香は踵を返し、その場を去って行った。
「…“罪人には罰を”…か。」
その言葉がズシンと流歌の身体に重圧としてのしかかった。悲しげに空を見上げ、そして小さく笑む。
「私は…守りたい。この世で一番大切な人を。その為に私は…『────』へと成り果てたのだから…」
ギュッと掌を握りしめる。
「全てを犠牲にしてでも『望み』を叶える。誰にも許されなくていい。私が決めた道だ。例え憎まれることになっても…後悔はない」
空に向けていた顔を下げ、そろそろ隊首会が始まる時間だと思い、踵を返す。
「もう二度と…失いたくないから───…」
小さく呟き、流歌は一番隊舎へと続く道を静かに歩んで行った…。
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