第12章 零番隊復活
一番隊舎の敷地内に絶好の茶会広場がある。
「これでよし」
円状に隙間なく並べられた石の内側には透き通る程の綺麗な池水が張られている。
水の中を優雅に泳ぎ回る赤と白の模様を描いた色鮮やかな金魚達は、尾びれを動かし、水面から顔を出すと口をパクパクとさせている。
「今回も我ながら完成度が高い」
徹夜して作った和菓子を毛氈の上に並べ、参加者達を待つ。
有平糖、淡雪羹、外郎、柏餅、葛桜、素甘、落雁───和菓子の品々が甘い匂いを漂わせている。
「やっぱり来ないか…」
伝令神機で時刻を確認する。予定の時間を過ぎても誰かが現れる気配はない。
「(仲間には伝えたが…やはり難しかったか。)」
「あら、あたしが一番乗り?」
「!」
「遅れてごめんなさいね」
「乱菊さん…」
包み紙を片手に現れた乱菊は驚いた顔を浮かべている流歌を見て首を傾げる。
「なに驚いてんのよ?」
「いえ。来てくださってありがとうございます」
「これから始めるんでしょ?」
「はい」
「美味しそうなの並んでるじゃない」
草履を脱いで座った乱菊は毛氈に並べられた和菓子を見て言った。
「お口に合えば良いのですが…」
「まさかこれ全部あんたが作ったの?」
「はい」
「凄いじゃない」
「男がお菓子作りなんておかしいでしょうか…」
「そんなことないわ。趣味を持つのに性別なんて関係ないもの」
「乱菊さんは料理は?」
「あたしは食べる専門よ」
「(そんな自信満々に言わなくても…)」
流歌は思わず苦笑した。
「コレ、あんたに」
「茶菓子まで持って来てくれたんですか」
「日番谷隊長からよ」
「!」
「開けてみたら?」
クスリと笑んだ乱菊から紙包みを受け取り、中身を見る。
「甘納豆…!」
「本当は隊長も参加する予定だったんだけど今日中に終わらせなきゃいけない仕事があって来られなくなっちゃったのよ」
「…そうなんですか」
「残念でしょうけどあたしで我慢してちょうだいね」
「僕は乱菊さんが来てくれただけで嬉しいですよ」
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