第12章 零番隊復活
それぞれが各自、部屋に戻る中、談話室に来た梨央は窓に歩み寄り、空を見上げた。
「……………」
鳥のいない青く澄んだ空。様々な形の雲が刻を刻むように進み、それこそ世界が廻っているかのように思える。
「ここにいたのか」
「蒼…お兄ちゃん」
「おい何で今言い直した。普通に名前で呼べよ。わざとお兄ちゃん言うな」
呆れたように入って来た蒼生はニコニコと笑みを浮かべる梨央の横に立つ。
「よく頑張ったな」
「うん」
「独りで心細かったろ」
「…珍しく甘やかしてくれてる」
「馬鹿言え。お前を甘やかしたことなんて一度もねーわ」
「嘘つきだな〜」
「…冴島の件、どうすんだ?」
「既に手は打ってある」
「なァ…梨央」
「うん?」
「お前俺に…」
「……………」
「いや…何でもねえ」
「ちょっと。言いかけた言葉は途中で止めないでよ。余計に気になるじゃん」
「何でもねえっつーの。気にすんな」
「気になるから教えて」
「…何言おうとしたか忘れた。」
「そういう逃げ方はズルい」
窓から離れた蒼生は本棚から一冊、本を引き抜いて暖炉の側で読み始めた。
「……………」
梨央は寂しそうな顔で佇む。それを見た蒼生は深く溜息を吐いた。
「ハァ…寂しいならこっちに来ればいいだろ」
「!」
「ほら」
「うん!」
手招きする蒼生にパァッと表情を明るくさせた梨央はパタパタと歩み寄り、蒼生の背中に自分の背中を引っつけて座った。
「♪〜♪♪〜♪♪〜」
余程嬉しかったのか、仲間には見せない妹としての顔でニコニコと笑顔を浮かべ、鼻歌を歌う梨央。そんな妹の嬉しそうな顔に蒼生も笑むと読書を再開させた。
「ねぇ蒼生くん」
「読書中」
「いつも私を守ってくれてありがと」
「それが兄としての務めだからな」
「いつもそばにいてくれてありがと」
「お前を守ってやれんのは俺だけだろ」
「蒼生くん、大好き」
「…知ってるっつーの」
本に目を向けたままぶっきらぼうに言った蒼生に梨央は嬉しくなって笑った。
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