第11章 太陽の木漏れ日
「(この空をいつまで見ていられるだろうか…)」
切なげに空を見上げた後、窓の隅に置かれた花瓶を見つける。桃色の綺麗な花が六本、生けられていた。
「その花、どうしたの?」
「起きたら置いてあった」
「前に来た時は無かったよね?」
「うん。秋桜の花を選んでくれて嬉しいな。零番隊の隊花でもあるもんね」
「今の時期に咲いてるなんて珍しいな。本来なら秋に咲く花なんだが…」
「霙、花の中で秋桜が一番好き」
「秋桜の花言葉、知ってる?」
「“揺るぎない結束”と“永遠の絆”!」
「そうだね」
「まさに霙達にピッタリな花!」
「でも秋桜には“偽りの絆”“壊れる愛”なんてのも存在する」
「えー何それー!」
「(そしてもう一つ…)」
“果たせない約束”
「霙達の絆が偽物なワケないじゃん!」
「まぁまぁ、所詮は花言葉だから。必ずしもそうだとは限らないよ」
「むー…」
「私達の絆は永遠だ。それは本物」
「うん!」
「だから…大丈夫」
優しく笑んで言えば、霙も笑い返した。
「霙ね、懐かしい夢を視たよ」
「どんな夢?」
「まだ零番隊が解散する前。みんなで楽しく笑いあってる楽しい夢。そして梨央ちゃんの為に刀を握って戦ってた」
「……………」
「今の状況じゃ仕方ないって理解してるの。戦うにしたって浅打ちじゃ何の役にも立たない。零にいた頃ならみんなの…梨央ちゃんの役に立ったのに…っ」
「……………」
「本当は抵抗したかった。でも霙は零番隊の隊士じゃなくて四番隊の鬼灯霙だから…。身体を痛めつけられた時、零道でアイツらをぶっ飛ばしてやりたかったよ。だけど…零じゃない霙は…無力だよ…っ」
「(彼女の気持ちは痛いほど理解してる。)」
「でもね、約束したから」
「!」
「霙達を零に戻してくれるって」
「あぁ、約束した」
「だから霙は頑張れるの。どんなに辛くても、いつか零に戻れる日がきっと来るって信じてるから」
「必ず守る。キミ達を零に戻す。だから…もう少しだけ頑張ってくれ」
「うん!」
嬉しそうに返事をした霙と別れ、流歌は四番隊舎を後にした…。
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