第11章 太陽の木漏れ日
「要するにキミは怪我人でありながら病室を抜け出し、隊舎から大量のお菓子を抱えて持って来たというわけだな」
「ソウデス…」
「霙、そこに正座しろ」
「ハイ…。」
流歌はベッドの上で霙を正座させると、近くまで歩み寄り、声のトーンを変えずに説教を始める。
「昼食は?」
「食べました…大盛り4杯」
「それでもキミの空腹は満たされないのか?まだピコンピコンと危険信号が鳴っているのか?そこのお菓子を完食しないとキミは満足しないのか?」
「既に満足しております…」
流歌の放つピリついた空気に霙は身体をシュルシュルと恐縮させた。生まれたての子鹿のようにプルプルと身体を震わせ、顔を俯かせる霙に…現実を突きつけた。
「デブるぞ」
「!?」
その言葉に霙はハッと顔を上げる。そしてテーブルに残っているお菓子の山を見た。
「…デブる?」
事の重大さに気付いたのか、目に涙を浮かべた霙は正座のまま上体を前に倒してベッドに伏せると…泣いた。
「うわあああん!デブるのやだよおおお!でも食べたいよぉぉぉ!うえええええーん!」
「(やっと反省したか…)」
「でもちょっとだけ食べたいよおおお…っ!」
「(全然反省してなかった。)」
「食べ物を粗末にするなんて罰当たりだもんんん…!!うえっ、えぐっ、ずぴっ。デブってもいいから食べたいですぅぅぅ!!」
「ダメです。」
「……………」
泣き落としなら許してくれると思ったのか、霙は悲痛に叫ぶも流歌には通用しなかった。むしろ即座にバッサリ切り捨てられた。
「(暴食怪獣ミゾレゴン…撃退。)」
心の中でガッツポーズをした。その後、病室を抜け出してまで取りに行ったお菓子達は流歌によって片付けられた。
「調子はどう?」
「バッチリ☆」
ニカッと笑い、ピースサインを作る。
「リキュールもお疲れ様」
そう言うとリキュールはビシッと敬礼した。
「今日も晴れて良かったねー」
「本当だな」
「あ、また雲の形が変わってる」
「こうして見ると世界が動いているように思えるな」
「実際に動いてるのは雲なんだけどねー」
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