第11章 太陽の木漏れ日
そして霙が退院して一週間、午前中に頼まれていた仕事を終わらせ、休憩に入った流歌はその足でやちると共に植えた花の花壇へと赴いた。
「幸福花の芽が出てる」
育てるのがとても難しいとされる幸福花から小さな芽がぴょこっと生えている。
「そう…私でも育てることができるのか」
チューリップもパンジーも同じく芽が出ている。やちるも時々ではあるが花の様子を見に来ているようだ。
「ふぁっ…」
欠伸が出てしまい、手で押さえる。木陰に移動した流歌は木の幹を背に預け、休むことにした。
「疲れた…総隊長め…仕事の量が多すぎ…」
ウトウトとし始め、目を閉じる。
「(風の音が心地いい…。彼処にいたら感じることはなかったな…)」
ザワッ
「(この霊圧…)」
何者かが近付いてくる気配を感じた。
「神崎」
「……………」
ゆっくりと閉じていた目を開ければ、そこには日番谷が立っている。
「何かご用ですか」
貴重な睡眠を邪魔され、つい不機嫌な声が出てしまった。
“用があるから来たんだろ”と言われる気がして構えていたが、流歌の予想とは大きく外れ、日番谷は気まずそうに視線を逸らす。
「?」
その反応に疑問を浮かべるが…
「(あぁ…怖がらせたか。)」
流歌は自分の瞳の色を気に入っている。蒼生と同じ色をしているからということもあるが、大切な人が好きだと言った青い目でもあるからだ。
けれど、その青い色は、マイナスの印象を与えてしまうこともある。
「(綺麗だと言われる反面…冷たく思われてしまう。)」
深海を映したかのような
キラキラとした青い瞳は
どこか冷たい印象を与えてしまう
それは流歌も分かっていた
「あなたと一緒にいる所を誰かに目撃されると厄介なのでどこかに行ってくれませんか」
会いたくなかった人
一番遠ざけた人
彼の碧緑色の瞳は
綺麗に透き通っていて
悪を許さぬ強い意思が宿っている
市丸ギンとは別の意味で
全てを見透かしてそうで
居心地が悪い───……
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