第10章 大切だから許せない
「彼女は悔しかったでしょうね。あの女のせいで憧れの人の役に立つ事が出来なくなってしまった」
「四十六室に抗議すりゃ良かっただろ。何でも冴島が悪いと決めつけるな」
「甘いですね」
「何?」
「四十六室に抗議することは不可能です。ただの死神が会うことすら難しいのに」
「何でお前にそんなことが分かるんだよ」
「…経験がありますので」
「は?」
「いえ、こっちの話です」
流歌は自嘲の笑いを浮かべる。
「彼女は四十六室と同等に対話出来る権利を持っていません。よってあの連中に何を言っても無駄。あの連中に意見を述べられるのは“全ての権利を与えられた者のみ”。それ以外の者の発言は聞き入れません」
「…話は分かった」
「!」
「お前は華月の脱退した原因は冴島が仕組んだ仕業だと言うんだな?」
「はい」
「けどな、顔色だって良くなかった。医者も体調不良が原因だと判断した。だから華月は止むを得ず脱退の道を選んだんだ」
「(全然分かってないじゃないか。)」
何をどう聞いてたんだ彼は
あぁまた…真実が捻じ曲げられる
「こんなことは言いたくねぇが…嘘を付けば更にお前は信用されなくなる。分かってんのか?」
うんざりしたように溜息を吐かれ、その瞳には再び失望の色と軽蔑の眼差しが向けられる。
「嘘は吐いてません」
煩わしさに嫌気が差して溜息を吐く。その態度に日番谷の眉がピクッと跳ね上がる。
「あなたの話は金輪際聞きません」
「おいっ」
「まぁでも…少しだけヒントをあげましょうか」
「!」
「僕の話を信じるかはそちらの自由です。ですがもし、偽りのない真実が知りたいなら『吠葛』という村を訪ねてください」
「吠葛?」
「そこに本当の真実があります」
「どういう意味だ…?」
「教えられるのはここまで。この先の真実を求めるのなら自分の足で行き、自分の耳で聞いてください」
「……………」
「それでも信じることが出来ないなら…僕はあなたを心底軽蔑します。」
そう言い残し、流歌は日番谷の前から立ち去った。
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