第10章 『あなたの背中。』木兎光太郎
やった!
おっきな声がしたかと思ったら、私の体はぐいと前に引き寄せられ、木兎くんの胸の中に収まる。
『ぼっ!木兎くん!』
恥ずかしい…と呟くと、えーと不機嫌声。
「俺、好きな奴とはずっとくっついてたいんだけど。」
『私、恥ずかしすぎて死んじゃう…』
「…わかった。」
そう言って木兎くんは私から離れる。
「じゃあさ、手は?」
そう言い、ほいっと木兎くんが手を出す。
そこにそっと手を乗せると、ぎゅっと包み込むように手を握る。
「へへっ!」
にかっと笑う木兎くんにお返しとばかりに微笑めば、木兎くんはさらににかりと笑う。
「好きだぜ?夏乃!」
『私も…すき…』
その時突然、教室の扉が開き声がかかる。
「木兎さん、部活…」
「あ、あかーし。」
シンとなる教室。
「監督、カンカンですよ。早めに部活に来てくださいね。」
「マジか!やっべー!…ってことで部活行ってくるな?」
『いってらっしゃい。』
エナメルバッグを肩に提げ、教室を出ようとする木兎くん。
『木兎くんっ!』
私は、勇気を出してそのおっきな背中に抱きついた。
私の大好きな背中に。