第41章 『嫌い、すき。』孤爪研磨 R18
今までのことを謝ってくれたことは嬉しい。
でも、なし崩しにこのまま復縁してしまえば今までと同じことの繰り返しだ。それを問えば、研磨が至極簡単に答えを導き出す。
「おれん家、住めば。」
「いや、それは迷惑…じゃない?私夜勤とかあるし。」
確かにその方が職場も近くなるからその提案はあり。それに通うより研磨と会う時間は増えると思う。でも研磨の仕事の迷惑になるんじゃないかの気持ちがぐるぐると渦巻く。
そんな私の体を研磨は再び抱き寄せると、鼻先に唇が寄せられる。
「だったら同棲したって言う。夏乃が嫌かなって思ってたから公表しなかったけど、その方が都合いいんならする。」
「それじゃあ研磨の登録者数減っちゃうでしょ。」
知ってるよ。画面越しの研磨に恋してる子もいるって。
そういう子が配信の時にスパチャ?してくれてるって。
そういう意味で聞いたのに、研磨は不思議そうに首を傾げる。
「…別に。だって減った分は巻き返せるだろうし。それにおれ、最初から夏乃が隣じゃないと駄目なんだって。」
きんいろの猫のような瞳が私を覗き込む。
「お願い。おれのものになって?」
研磨の仕事のことでまた喧嘩をするかもしれない。
他の配信者や音駒の先輩後輩に嫉妬するかもしれない。
でも、その瞳に覗き込まれたらまた信じてみようかなって思う私は、多分研磨に弱い。
だって私も研磨と同じで、多分高校の頃から研磨じゃないと駄目だから。
問いかけを待つ唇にこちらから口付ければ、再び研磨からの問いかけ。
「おれのこと、すき?」
もちろん答えは…?
end