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夜の少年達【HQ】

第10章 『あなたの背中。』木兎光太郎



それから約2ヶ月。
木兎くんが学校にくる日は毎日、時間をとって勉強会をした。

最初は頭上にクエスチョンマークを何個も浮かばせていた木兎くん。
それが、少しずつペンの走るスピードが上がり、丸の数も増えていった。
そして先週、大学の推薦枠をかけた試験が行われ、今日が発表の日…らしい。

放課後、職員室に行ったっきり戻ってこない木兎くんをそわそわしながら待つ。

授業が終わった教室。
みんなは足早に帰宅、もしくは部活に顔を出しているようなので誰もいない。
教室には橙の光が差し込んできている。

日が落ちるのが早くなってきたな。
もう、秋なんだなぁ。
そう思っていると…

ばたばたばたばたっ!

静かな3年の教室等に響く騒がしい足音。

ばんっ!

「夏乃っ…!」

『木兎くんっ!』

目があうと、木兎くんはにかりと笑ながら私の方に突っ込んでくる。

「受かったぁー!」

『ほっ本当!』

「ほれ!」

そう言い、木兎くんは一枚のプリントを見せる。
そのプリントには合格の文字。

『おめでと!おめでとう!すごい!』

「すげーのは夏乃だって!夏乃いなかったら俺受かってねーもん!」

だからありがとな?とぎゅっと私の手を握りながらにかっと笑う。

『すごいのは木兎くんだよ?いっぱい頑張ったもんね?』

握られた手を握り返すと、木兎くんは驚いたような顔をし、ぱっと私から手を離す。

そわり、そわり。

いつもの木兎くんと違う。
何かそわそわしてる。


「あー…勉強見てくれてさんきゅーな?」

そっか…
受験が終わったから勉強会もおしまい。
前みたいなクラスメートに戻るのか…

『私こそ、楽しかったよ?』

そう伝えると、にかっと笑い、木兎くんはそっかとぽつりと呟いた。

『どうしたの?木兎くん?』

「あー…あの…前さ、合格したら1つ俺の願い聞いてくれるって言ってたじゃん?」

『うん。言ったよ?何がいい?』

そう聞けば、木兎くんは私から目をそらしながら頭をかいている。

夕日で、木兎くんのシルバーの髪の毛も、日に焼けてない白っぽい肌も、お星様みたいにきらきら輝く瞳もみんなおれんじ。

ちらり。

瞳だけで私を見た木兎くんは口元をおっきな手で覆いながら、いつもの半分…1/3の声でぽしょりと呟いた。


「おれと…付き合って?」



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