第10章 『あなたの背中。』木兎光太郎
追試当日、3教科だからそろそろ終わるかな…とそわそわしながら教室で木兎くんを待っている。
ばたばたと廊下を走る音がしたかと思えば勢いよく教室のドアが開いた。
きょろ、きょろと教室を回し見た後、ばちんと目があうと、ぱああっと顔をほころばせた木兎くんは私に近づくとがばっと私を抱きしめた。
「っやべー!やべーよ!こんな点数初めてとった!夏乃ありがとー!」
何が起きてるの!
『ぼっぼくとくんっ⁈』
「マジ感謝!本当、ありがとーな‼︎」
先ほどより力強く抱きしめられ、私の顔は真っ赤っか。
離れようにも力が強すぎて離れることができない。
『はなしてぇ…』
か細い声が私の喉から出ると、ぐいぐいと締め付けていた腕が勢いよく外れ、肩を掴まれたかと思ったらがばりと距離が取られる。
「わりっ!嬉しくてつい!」
『だっ大丈夫…』
心臓は痛いくらいドキドキしてるけど…
『木兎くん、おめでとう。』
そう伝えると、木兎くんは笑う。
そして、私にこう言った。
「でさ、今日、センセーに聞いたら大学の推薦、結構やべーらしくてさ…
このまま勉強教えてくんねーかな?」
頼む!と両手を合わせ頼む木兎くんが可愛くて私は小さくうなづいた。
『やる気出るように、合格したら、何か1つ、私がお願いきく…の、どう?』
「まじで!ちょーやる気出る!」
やる気でたし、勉強勉強!と、言いながら着席しノートを取り出した木兎くん。
私はその前に座り、教科書とノートを取り出し、ページを開いた。