第10章 『あなたの背中。』木兎光太郎
「なあ、椎名…?だっけ?これ、教えてくれねー?」
夏休み初日、自習に来ていた私に木兎くんはそう言った。
『…え?私?』
「そう。」
ちなみに話はほとんどしたことない。
『な…で……私?』
ぽそぽそと小さな小さな声で話す私の声を聞き取った木兎くんは、夏の太陽みたいににかりと笑う。
「だって、頭いーじゃん?お前。」
毎回トップ10にいるじゃん。と言う木兎くん。
『そ…だけど…』
「な?教えてくれねー?この追試合格しねーと合宿いけねーの。」
そう言って見せてきたのは期末テストの問題と解答用紙。
ちらりと見ただけでも丸の数が少ない。
『そう…なんだ。』
「だから頼む!」
がばっと上半身を倒し私に頭をさげる木兎くん。
『わかった!わかったから頭上げて⁈』
わたわたとしながら返事をすれば、体を倒したまま顔だけを上げ、ニカっと笑う。
「じゃあ今から!午後から部活だから!」
『うん。取りあえず、何から?』
「何…がいい?」
全部わかんね。
そう言う木兎くんに、私は1から勉強を教え始めた。