第10章 『あなたの背中。』木兎光太郎
初めてその背中を見たのは友達に連れてこられた体育館。
練習試合だったらしく体育館に一歩入ればものすごい熱気。
私の手を引きながら人波をかき分け1番前に出て行く友達。
小さな声で謝りながら前に進むとワッと歓声が上がる。
「ボクトがスパイク決めた!」
ボクト…?確か同じ学年だった…かな?
ぐっと体を乗り出しコートを見る。
「俺によこせ‼︎あかーし!」
大きな声が響き、びっくりしてそちらを見た。
瞬間、ぐっと沿った背中。
跳躍する体。
光る汗。
ばちぃんとボールがすごいスピードで反対側のコートに落ちる。
なに…これ…
どくん
どくん
心臓が激しく脈打つ。
苦しいくらいの高鳴り。
私は一瞬であの人…ボクトくんに心を奪われた。