第8章 『素直になれない不器用カノジョ。』 及川徹
結局渡せないまま放課後がきて、部活も終わる。
つーかファンクラブだかなんだか知らないけど部活前までずっと女の子が及川の前にいたから…渡せるわけがないじゃないし!
「今日自主練していく人ー!」
そう、及川がみんなに聞こえるよう叫ぶ。
しかしみんなの反応はイマイチ…
「いーもーん!俺1人でも自主練やっちゃうからー!」
「勝手にやってけクソ川。でもオーバーワークしすぎんなよ。」
「あ、見張り役必要?だったら夏乃に見張りさせりゃーいーじゃん。」
そう言って私にウインクするのは花巻。
「そうそう。放っておくとすぐやりすぎるからなー。」
にやりと笑いながらちょっとだけわざとらしく及川に言うのは松川。
「悪い、夏乃、今日大丈夫か?」
何も知らない岩ちゃんは心配そうな顔をして私に問いかける。
『予定もないし大丈夫だよー。及川、見張ってないとまた無茶しちゃうし。』
今日プレゼント渡すんだったらチャンスはこのタイミングしかない!
みんなありがとー!
心の中でお礼を言いながらみんなを見送る。
「ってことで自主練したらちゃんと夏乃送ってけよー?及川ぁー!」
着替えるために体育館を後にするみんなが次々に及川に声をかける。
「わかってるよー!及川さん紳士だしねー☆」
「うわっでた!エセ紳士。」
「酷ーい!マッキー!」
遠ざかっていくみんなの声を聞きながら私は、どうやってプレゼントを渡そうかと必死に考えていた。