第8章 『素直になれない不器用カノジョ。』 及川徹
「で、結局渡せなかった…と。」
「アホだな。」
『アホって言わないで…花ぁ…』
お昼、花巻と松川がお弁当を食べているところに突撃した私はいつも通り愚痴を垂れ流す。
「及川好きなら言えばいいじゃん。」
『言えたら苦労しないって…』
そう。
私、本当は及川のことが好き。
でも素直になれないまま好きになって2年の月日が経とうとしていた。
「あいつの何がいいんだか…」
『バレーしてる時の真剣な顔。』
「本当にそればっかりだな。お前は。」
ため息を吐きながら苦笑する松川。
『だって…好きなんだもん…』
「はいはい…」
昼食を食べ終えた花巻は落ち込む私の髪の毛をいじり始めた。
いつのまにか編み込まれていく私の髪の毛。
ふう、と息を吐けばいつの間にか目の前にしゃがむ松川が指で私の眉間をグリグリ押した。
「眉間にしわ。そんな顔するくらいなら顔面に投げつけりゃいいじゃん。それだったら気持ちのハードルも下がるって。」
口の端を持ち上げて笑う松川。
『今年こそはって思ったんだけど…』
ちらりと鞄を見ればライトグリーンのリボンがついたプレゼント。
中身は天然石を革紐で編んだブレスレット。
関係が近すぎず、遠すぎない、送っても引かれないプレゼント。
そして、たくさんあるプレゼントに紛れさせても大丈夫なもの。
「ちょっとは素直になれよ。」
私の髪を編み込んだ花巻は髪型が崩れないようにぽんぽんと優しく頭を撫でた。
『うん…』
わかってるんだけど…
素直になれないんだもん….