第8章 『素直になれない不器用カノジョ。』 及川徹
『クソ川、ニヤニヤきもい。』
そう毒付く私の目の前には表情筋が緩みまくったクソ川…もとい及川。
「だって今日は及川さんの誕生日だよ?俺がこの世に生まれ出た日だよ?嬉しくないわけないじゃない。」
『知るか…』
「ねーねー、夏乃はプレゼントないの?」
『は?あるわけないじゃん。』
「えー…」
ぶーと効果音が入りそうな顔。
頬を膨らませ抗議する及川。
『可愛くない。』
「えー‼︎‼︎」
げーん!
ショックを受ける及川に私は追い打ちをかけんばかりに右手を及川顔の前まで上げる。
『じゃあ、グーとパー、どっちがいい?腕にリボンつけてプレゼントしてあげるから。』
「いやいやいや!おかしいよね!及川さん誕生日なんだよ⁈なんでそんな物騒なもの叩き込まれなきゃいけないの‼︎」
『あ』
「うっせーぞ!クソ川ぁぁぁぁあ!」
ごちんっ!
「いったぁぁぁぁぁい!」
『あ、岩ちゃんおはよ。』
「おう。」
もう定番化しているおなじみの挨拶。
及川が騒ぎ、岩ちゃんが鉄拳制裁。
朝から及川に絡まれるようになってからは毎回これが日課になりつつあった。
この日課本当はすごく嬉しい…
なんて絶対言えないんだけどね…