第7章 ぽにーてーる☆せったーず。
赤葦京治の場合。
pm4:15
「先輩、木兎さんは?」
放課後、ジャージに着替え体育館に向かうと赤葦に声をかけられる。
『木兎なら課題忘れて説教中。』
ため息なのか安堵の息なのかわからないがふうと息を吐く赤葦を横目で見ながら私はジャージのファスナーを上げた。
『ひゃっ!痛っ!』
「どうしました?夏乃先輩。」
声をかけられ赤葦の方を向けば淡々と状況説明をしてくれる。
「ファスナーに髪の毛が絡まったんですね。とりますか?」
『いや、部活の準備して?私なら大丈…っつ!』
動くたびに絡まった髪の毛が引っ張られ地味に痛い。
「座ってください。」
そう促され仕方がなく床に座る。
赤葦は目の前にしゃがみ、ファスナーの金具から髪の毛をはずしにかかる。
髪の毛は複雑に絡み、なかなか外れない。
「赤葦ー!ロードワーク行くぞ!」
木葉が赤葦に声をかけたが今起こっている状況を見て、何か察したようでニヤリと笑う。
「木葉さん、先に行っててください。」
「おう。赤葦、ごゆっくりー」
『木葉、何ニヤニヤしてんのよ…』
「べっつにー?じゃあロードワーク行ってくるわ。」
そう言って木葉はみんなを連れてロードワークに向かった。
広い体育館には私と赤葦2人きり。
赤葦は数分髪の毛と格闘し、うまく金具から髪の毛をはずした。
「毛先、痛んじゃいましたけど…」
『このくらい大丈夫。ありがとう。でも、なんで絡んだんだろう…』
そう、疑問を口に出せば赤葦が答えを教えてくれる。
「いつもと髪型が違うからですよ。」
そういえば、授業の時に邪魔でまとめたままにしていたんだっけ。
『ポニテ、やめておくか…』
ぽそりと呟けばその言葉に反応した赤葦もぽそりと答えた。
『その髪型似合ってますよ…?』
あまり、そう言うことを言わない赤葦にびっくりして赤葦の方を見れば全く動じてなくて…
なんだ…つまらない。
『髪の毛、ありがとう。ロードワーク行ってらっしゃい。』
そう言い、送り出そうと背中を押したらなぜか全く動こうとしない。
前に回り込めばいつのまにか私は赤葦の腕の中。
「もう少しだけ…こうしてていいですか?」
断る理由がない。
私はこくりと頷き、赤葦の胸に顔を埋めた。
ドキドキ煩い心臓の音、赤葦には聞こえませんように…
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