第41章 『嫌い、すき。』孤爪研磨 R18
コンロの火を止めて、台所に入ってきた研磨の方を向く。
「きらい。」
気持ちとははんたいの言葉が口から溢れた。
「きらい。別れたまんま、高校の時の綺麗な気持ちのままにしておけばよかった。」
知ってる
私と一緒にいるよりも配信の時の方が声が弾んでいることも
たまに来る黒尾先輩との方が楽しそうなことも
私とした小さな約束も
守ってもらえないことも
「連絡したよ。気づかなかったのは研磨だよ。いつもそう。」
いちど口から溢れてしまえば、それは止まらない。
「研磨からより戻そうっていってくれたけどあの時から何してくれた?毎回私が空いた時間にご飯作りに来て、それ一緒に食べて、セックスして終わりじゃん。」
悲しい顔の研磨。
でもそうさせてるのは私。
わかっているのに唇が、涙が止まらない。
「ごめん。」
一方的な私の言葉へのごめん。
それは何に対して。
「もう、無理だよ。私、ずっと苦しい。」
共有したカレンダーのアプリに私だけ書き込むのも
会いに来た研磨に触れるのがセックスだけなのも
私が帰る時も、玄関までしか見送りがないことも
全部わかっているのに
全部が苦しい
「研磨の…コヅケンの彼女でいるのが苦しい。」
そう研磨に告げると、私は鞄を持ち玄関に向かう。
「待って。」
それを追いかけてくる研磨。
靴を履き振り返れば何か言おうと唇を開いている。
「今だけじゃなくて、今までもそれだけ必死でいてほしかったよ。」
ばいばい
家の引き戸を閉めたら、関係はおわり。
いつもよりゆっくり帰ったけれど、研磨は追いかけては来なかった。