第38章 『S系女子の捕獲』 日向翔陽 R18
なぜ、声が聞こえたのだろう。
声が聞こえた方を見れば、そこには息を切らした翔ちゃん。
翔ちゃんは私に近づいてくると、上に乗る灰羽の胸ぐらを掴む。
「っ!リエーフ!!」
「早かったね、日向。」
「お前夏乃ちゃんに何してんだっ!」
「ん?カレカノごっこ?」
「夏乃ちゃんから離れろっ!!」
すごい剣幕。
いつもニコニコしている翔ちゃんの激昂に驚く私をよそに灰羽は両手を上げてベッドを降りた。
露出した胸を隠すようにシーツを手繰り寄せ上半身を起こす。
「夏乃さんに、俺の彼女役お願いしてただけ。」
「灰羽…それ誤解を招く…」
「俺は別に構わないけど?」
「とりあえず翔ちゃんは座って?」
ぶすりとしてしまった翔ちゃんをなだめるように私の隣に座らせる。
その向かい側に椅子を持って来た灰羽は、シャツの胸元のボタンを外しながら座り、今回の件を説明した。
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「でも納得できない。」
全ての話を聞いた翔ちゃん。
「別に他の人でもよかったじゃん。」
「俺に絶対惚れない人がいいんだって。後腐れない方がいいじゃん?俺、結婚するつもりないし。まだ遊びたいしさ。」
夏乃さんとも遊びたいけどね、なんてくすりと笑われたけれど本気になんてしていない。
さて、と呟いた灰羽。
椅子から立ち上がると脱いだジャケットやベスト、ネクタイを持ちベッドに近づいた。
「はい、日向。」
にかり。
灰羽は笑いながら翔ちゃんにカードを渡す。
「ここのルームキー。明日の11時チェックアウトな?
料金は精算済みだしルームサービス頼んでも俺に精算来るように頼んでるから好きに使って?」
「は?リエーフなんで…」
「夏乃さん借りたお礼と誕生日プレゼント。あ、あとこれも。」
灰羽が投げた何か…もとい小さな2つの箱は、ベッドの上にポンと落ちる。
じゃあねーなんて言いながら灰羽は部屋から出て行った。