第38章 『S系女子の捕獲』 日向翔陽 R18
緊張が解けたのか、体がフラフラする。
「夏乃さんちょっと座ってて?」
そう言ってわたしをロビーのソファーに座らせた灰羽はわたしから離れどこかへ行った。
目で追えばどこかに電話をしている。
どこだろう、なんてぼやりと考えていれば電話を終えた灰羽が戻ってくる。
「…大丈夫?」
頭がふわふわする。
灰羽が来たから立ち上がったけれどまともに立てているのかがわからない。
「わたし…ヘマしなかった…?」
「上出来。夏乃さんに頼んで正解だった。」
わたしの体を支えながらそう耳元で囁く灰羽。
アルコールのせいか、耳にかかる吐息が熱い。
「夏乃さん飲み過ぎですよ。まともに歩けないじゃないですか。」
「うる、さい。」
灰羽の手を払い歩こうとするけれど、酔った体にピンヒール、うまく歩けず体の軸がぶれる。
「夏乃さんごめんね。」
灰羽は謝ると、わたしの膝下に手を入れぐいと抱き上げる。
そしてクロークにあるわたしの荷物をもらうと、そのままエレベーターに乗り込んだ。
「わたし…帰る。」
「アルコール抜かなきゃ帰れないでしょ。」
「嫌だ…帰る。」
そうぼやいても、アルコールが回った体はいうことを聞かない。
情けないことに灰羽の胸元に頭を預けるようにしてしまう。
「上の部屋取ってるから。」
言われた意味がわからない。
でも、上に部屋を取っているということはそういう意味なのだろう。
嫌で逃げたくても、酔った身体はいうことを聞かずそのまま部屋のある階に到着した。