第38章 『S系女子の捕獲』 日向翔陽 R18
食事会は滞りなく行われた。
先に灰羽と打ち合わせをした『嘘』を並べ、笑みを貼り付ける。
「素敵な女性とお付き合いしているようで安心したよ。」
顔に似合わず流暢な日本語を喋る灰羽の父に愛想笑いを浮かべると、小さくため息をついた。
今日は翔ちゃんの誕生日。
本当なら翔ちゃんといるはずなのに、私はどうして彼氏でもない相手の親と会っているんだろう。
もやもやした気持ち。
それをカバーするように進むワイン。
お高いだけあって飲みやすいそのワインはアルコール度数も高く酔いも回る。
私が酔ってきたことに気づいたらしい灰羽の父が早めにデザートに切り替えてくれたため、9時前にはホテルのレストランを後にした。
灰羽父は自宅に帰るらしく、ホテル前のタクシーに乗る。
「リエーフ、夏乃さんに無理させるなよ。」
「わかってるよ父さん。」
「夏乃さん、今日はありがとうね。」
「いえ、わたしも会えて嬉しかったです。」
にこりと笑った灰羽父の顔がスモークに隠れていく。
完全に窓が閉まった後、タクシーはすうと道路に向けて進んで行った。