第38章 『S系女子の捕獲』 日向翔陽 R18
日曜日。
わたしは乗降者数が世界一の駅にあるカフェに来ていた。
目の前には翔ちゃんじゃなくて肉食ハーフ、灰羽。
「それ、上手いですか?」
「うん、美味しい。」
灰羽は自分が頼んだエッグベネディクトを食べ終わり、パスタを食べる私をじっと見る。
パスタの最後の一口を口に入れたのを見た灰羽。
すかさず店員を呼び、デザートを持ってきて欲しいと頼んだ。
「本当、女慣れしてるね。」
「だって躾けられましたから。」
躾?
よく聞いてみれば、お父さんが実はロシアの良い所の出身らしく、テーブルマナーや女性への接し方などは幼少から教えられたらしい。
「使い方に関しては完全に間違ってますけどね?」
デザートをお持ちしました。
そう言って店員さんがイチゴのタルトを私の前に置く。
灰羽はキャラメルのフレンチトースト。
店員さんが去るのを見送ると、灰羽がフォークを渡してくれたのでタルトを口に運ぶ。
「で、本題は?」
「食べてからじゃダメですか?」
「駄目。」
せっかちだなぁなんて言われたけれど知ったこっちゃない。
そんな私を見てくすりと笑った灰羽。
一口フレンチトーストを口に入れた後、今回呼び出した理由を話し始めた。
「彼女紹介しろって言われたんですよ、父に。」
「私はアンタの彼女じゃない。」
「知ってます。その日だけ俺の彼女のふりをして欲しいんですよ。」
「見返り。」
がめついっすねーなんて灰羽は言うけれど、こちらが時間を使った分の見返りは大事。
ひとしきり笑った灰羽はスマホを取り出すと少し操作をして私に見せる。
「ここ、うちご指定のパーティドレスのお店。父と会ってくれるんだったらその日のドレス、小物、ここで好きなの買ってあげます。」
「乗った。」
言ってくれると思いました、そう言って灰羽はスマホを戻しながら笑う。
そして残ったフレンチトーストを食べながら私に問うた。
「これからドレス見に行きたいんですが、空いてます?」
「翔ちゃんの試合が終わり次第会う約束してる。」
「じゃあ急がなきゃじゃないですか。」
灰羽はさらに残った残り僅かなフレンチトーストと添えられたアイスをぱくりと食べ、カプチーノで流し込む。
私も最後の一口のタルトを口の中に放るとミルクティーで流し込む。
準備できたのをお互い確認すると、私たちはカフェを後にした。