第36章 『残業終わりの甘い誘惑 後編』黒尾鉄朗 R18
お風呂のお湯が貯まるまで帰ってきた黒尾課長に遊ばれ、そのままお風呂場に連れ込まれる。
お風呂の椅子に座らされ泡で体を洗われ、いつのまにか1人湯船に浸かっていた。
「ちょっと待っててな。」
課長は私に笑いかけた後、自らの体を洗いはじめた。
下半身にタオルをかけていると言えども直視するのは恥ずかしい。
それに私だって、先ほどドロドロだったメイクを取りすっぴんだ。
顔を見られることも恥ずかしい。
お風呂に浸かり、他を見ながらそっと目線だけを課長に送る。
良いカラダ
肩や背中、お腹の無駄のない引き締まり方。
腹筋なんて綺麗に割れている。
ジムとか行ってるのかな
昨日も結構タフだったしな…
なんて考えていると、体を洗い終えたらしい課長が私の方を向いた。
「…椎名、見過ぎ。えっち。」
恥ずかしくてそっぽをむけば、課長は笑いながら湯船に入ってきた。
ざば、とお湯が溢れ、向かいに課長が座る。
直視できすに横を向くと、くくくと堪えるような笑い声。
「っ…緊張、しすぎ。」
「緊張っしないわけないじゃないですかっ!」
啖呵をきるように正面をむけば、課長は至極嬉しそうに私の頭を撫でる。
「どうして?」
わかってるくせに。
ほんとうに意地悪なんだから。
「てつろーさんが…すき…だから、です。」
「知ってる。」
余裕ぶっこいている年上課長の緩んだ顔。
どうしたら崩れるんだろう。
「余裕そう…ですね。」
ぽそり呟けば、その声を聞いた課長は私の腕をぐいと引き私を胸へと引き寄せる。
ぺたりとくっついた胸からは大きな心臓の音がどくどくと鳴り響いていた。
「これが、余裕そうだと思う?」
大きくて早い鼓動。
それは私とおんなじで…
「俺だって緊張してるんだよ。
30超えたおっさんが歳下の女の子抱いて緊張してるんだって。
信じられるか?」
くくっと笑ったその顔はいつも通りなのに、心臓だけがどくどくと早い音色を奏でている。
「それだけ好きなんだよ、お前が。」
どくん、どくん。
先ほどよりも鼓動が速くなる。
きっと顔も真っ赤だろう。
「信じ…ます。」
そう呟くと、頭上から小さく、柔らかく笑う声が聞こえた。