第33章 『秘密、ひみつ。』赤葦京治 R18
違和感を覚えたのは次の日。
週1の音楽の時間だった。
男子が美人と騒ぐ音楽教師が横を通った時、ふと香った甘い香り。
これ、昨日嗅いだ香り。
香水が同じ。
ただそれだけなのに
なぜかざわりと胸をくすぶった。
ーーーーーー
"香り"が頭から離れないまま、数週間が経過した。
音楽の授業が終わり、次の授業の移動をしていた時に思い出す。
「あ、プリント忘れた。」
「まじ?音楽の笹塚、授業は緩いけど宿題忘れだけは厳しいから取りに行きなよ。」
「うん。先行ってて?」
教室棟と別棟の、奥。
再びそこに戻り先ほどまでいた自分の席へ向かう。
プリントを見つけファイルにしまい込んだ時、がたり、と準備室から聞こえた物音。
どうしたんだろう。
先生、何かしたんだろうか。
気になり近づき、少しだけ空いたドアに手をかけようとして、止まる。
聞こえるのだ、声が。
普通の話し声でない、苦しそうな、途切れ途切れの声。
そして、くちゅり、くちゅりという水音が。
それがわからないほど子供ではない。
初めて"そういう場面"に遭遇してしまったからか、体が動かない。
さらに水音は増していき、喘ぎも増していく。
逃げなきゃ、逃げなきゃ。
そう思う気持ちとは裏腹に何故か高揚して行く気持ち。
こんな気持ち、初めてだった。