第32章 『S系女子のいいわけ』 日向翔陽 R18
強い衝撃は来なかった。
代わりに来たのは唇への熱。
驚きで目を見開けば、触れた唇の隙間から小さな声での催促。
「くち、ひらいて」
力を込めていた唇を解くと入ってくる舌。
付き合ってから何回しただろう。
初めて翔ちゃんとキスした時から、私の良いところは知られてる。
キスだけで翔ちゃんは私を骨抜きにする。
となりに見ている人がいる。
この状況はわたしにも翔ちゃんにもスパイスにしかならないようで、わたしも夢中で舌を絡めた。
かくんっ
わたしの腰が抜けたのに気づいた翔ちゃんがわたしの腰を支え、唇を離す。
「リエーフ?おれだと夏乃ちゃん、満足できてなさそう?」
翔ちゃんが鋭い視線を向けた先には、銀髪の彼。
お手上げと言わんばかりに両手を顔の横に挙げている。
「日向、降参。ごめんって。」
「じゃあおれ先に帰るから。今日の幹事大王様だろ?言っておいて?
いこ、夏乃ちゃん。」
最初から抜ける気だったのか翔ちゃんは自分の鞄を持って来ていたらしい。
そしてわたしが席に置き去りにしていたカーディガンも。
わたし達はそのまま店を出て、お店から近い翔ちゃんの家へと帰宅した。