第32章 『S系女子のいいわけ』 日向翔陽 R18
「「「かんぱーい!」」」
あのあと、みんなから名前を聞いたあと居酒屋へ移動。
個室に案内され乾杯となった。
みんな食べきれるのか…?ってくらい次々に頼んだ料理はどんどんみんなのお腹に入っていく。
食べ放題のお店でよかった…
料理もそこそこ消え、さっきまで隣にいた翔ちゃんは他のテーブルに向かい、わたしの周りにも人が少なくなる。
デザートに頼んだココナッツプリンを食べてる時、不意に隣に人が座った。
「おねーさん、それ、美味しい?」
いかにも肉食系の見た目。
キュッとつり上がった瞳。
大きな体を折りたたむように座る姿。
自己紹介の時にどこかのハーフって言ってたな。
「うん、美味しいよ。えっと…」
名前…なんだっけ…
名前を覚えていない罪悪感から目線をプリンに戻せば、子供っぽくもーと怒るハーフくん。
「は・い・ば!灰羽リエーフっす!さっきちゃーんとお姉さんに自己紹介したじゃないっすか。」
にかっと笑った感じが翔ちゃんみたい。
だけど、わかるよ。
キミ、すごく女慣れしてるよね。
「ごめんね?顔はインパクト強くて覚えてたんだけどね。」
「顔、覚えててくれたんならいいっす。
おねーさん正直好みだからメッセージアプリやってたら友達になりたいな、なんて。」
「いいよ、別に。」
スマホを取り出しメッセージアプリを開けば、掴まれる手首。
瞳を上げればぎらつく瞳。
ねろり、と赤い舌が唇を舐めている。
「おねーさんさ、結構遊んでるでしょ?
日向で満足できてるの?」
こそり、呟かれる言葉にもやり、心が陰る。
そんなことも知らずに、彼はわたしに再び話しかける。
「今日さ、2人で抜けない?俺おねーさんとセックスしてみたい。」
"せっくす、したいの。"
数週間前に、そう言って翔ちゃんに馬乗りになったのをふ、と思い出す。
「俺、おねーさんの身体マジ好み。一回くらいお相手してよ。」
掴まれた手首。
余らせた小指でつ、となぞられぶわりと鳥肌がたった。
「っ…ごめん、お手洗い。」
掴まれていた手を振り払ったわたしは、鞄を持つと部屋から退室、お手洗いに向かった。
覗き込まれる瞳が
女を誘う指先が
欲しいと含んだ声が
わたしを掴んで離さなかったから