第31章 『S系女子の秘め事』 日向翔陽 R18
side日向
体力を使いきりくたりと眠る夏乃ちゃん。
いじわるし過ぎちゃったかな。
涙でかさかさになった頬を指で撫でた。
寝顔は昔と変わらないな。
昔も昔、まだ男も女も一緒に遊ぶような年頃のころ、おれ達は盆の数日間を毎年一緒に過ごしていた。
一緒に野山を駆け回り、一緒に水遊びを楽しんだいとこのお姉ちゃん。
そんな彼女を異性として思い始めたのはおれが小学校高学年の頃。
その夏、せっかく久々に会えたのに夏乃ちゃんは奥の座敷にこもりっぱなし。
ここ数年あまり構ってくれなくなった夏乃ちゃんに焦れたおれは、大人の目を盗んで奥座敷に忍び込んだ。
夏の暑い時間なのにタオルケットにくるまる夏乃ちゃん。
汗をかいて暑そうだからと剥いであげたとき、ふと異変に気がついた。
シーツに染みる赤。
病気と勘違いして夏乃ちゃんを起こした時の夏乃ちゃんの顔が今でも忘れられない。
指摘され、真っ赤に染まる顔。
恥ずかしくて恥ずかしくて、うっすら浮かぶ涙。
すぐに母さんたちが気づいておれは部屋から離され、女性についての簡単な説明を受けた。
その後、恋愛のれの字も知らなかったおれ。
中学の時も高校の時も結局経験はなかった。
大学で、先輩や同級生にその手の話を振られてもいまいち反応できなくて…
大学の長期休み、烏野バレー部のOB会があるからと帰省すれば夏乃ちゃんと久々に再開。
積極的にくっついてきた夏乃ちゃんになぜか感じたことのない感情。
ぞくぞくするような。
まるで試合前のような高揚感。
あ、気になる。
直感でそう感じた。
だからあえて"可愛い翔ちゃん"で対応。
油断させた後、攻めた。
夏乃ちゃんをおれのものにするために。
多分、あとちょっと。
あとちょっとでおれのものになる。
そう、おれは夏乃ちゃんの寝顔を見ながら感じた。