第30章 『私を1度、満たしてください。』灰羽リエーフ R18
適当に選んだホテル。
フロントから鍵を受け取ったライオンさんが私に手招きをする。
「ほら、行くよ?」
先行く背中についていけば、頭上に点滅するライト。
その部屋の鍵穴にキーを差し込んだライオンさんは、躊躇なくキーを回し扉を開ける。
「どうぞ、うさぎさん。」
レディファーストなのか、ライオンさんは私に先に部屋に入るように促す。
そんなことしなくても逃げないのに…
そう思いながら私は部屋に入りパンプスを脱ぐと、用意してあるスリッパに足を通した。
ライオンさんもスニーカーを脱ぐとスリッパを履き、部屋に続く廊下を進むように私の背中を軽く押す。
3メートルもない廊下がやけに長く感じる。
足を踏み出し、扉に手を掛け開ければ、目の前には大きなベッド。
すぐ横にソファがあるのでそこに荷物を置き、私はベッドの淵に腰かけた。
「はい、飲み物。」
ホテルへ移動する間に買ったパックのミルクティ。
自分で買うと言ったのに、ライオンさんは”このくらいいいから”と買い物かごにミルクティを放り込みお会計に行ってしまった。
「ありがと「あとこれ、食べる?」
ミルクティと一緒に手渡されたのはレジ横で売られている骨抜きのチキン。
「俺1人だけ食べんの嫌だから一緒に食べよ?」
そう言って手に乗せられたチキン。
ありがとうといただきますをライオンさんに言い、ぴりりと包み紙を開き、ぱくりと食べた。
もぐもぐと咀嚼しながらパックの蓋を開きストローを刺せば、目の前の1人用ソファに腰掛けたライオンさんが私に話しかけた。
「うさぎ…ってさ、普通にモテそうじゃん?
なんで出会い系?」
覗き込むように見つめられる瞳。
きらきらと光るグリーンの瞳が直視できず、ふいと目をそらしぱくりとチキンに食らいつく。
「…彼氏が仕事で忙しくて……だから…」
恥ずかしくて言えないその先の言葉。
ライオンさんは私の顎に指を添え、顔を自分の方に向けさせると、瞳をぎらりと光らせる。
「他の男で発散…ってやつ?
いいね。俺そういうの好き。
彼氏とできなかった分、めちゃくちゃ満足させてあげるから。」
そう言い笑ったライオンさんは名前のような肉食動物が獲物を狩る時のような目をしていた。