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夜の少年達【HQ】

第27章 『貴方だけしか見えません。』月島明光 R18




かちゃん。

部屋の鍵が開く。
2人部屋にはいり荷物を置けば明光さんが笑う。

「お風呂、先がいい?後がいい?」

その声に体が跳ねる。

『私…後でいいですっ!』

しゅるりとネクタイを外しながら私の方へ近づく明光さん。

きっと緊張していたのが丸分かりだったのだろう。
明光さんの手が私の頭にぽんと乗った。

「まだ何もしないよ。じゃあ先に風呂、使うよ?待っててね?」

そう言って明光さんはバスルームへと消えていった。

と、同時にふ、と体の力が抜け床にへたり込んだ。
私、ものすごく緊張してる。

なんとか立ち上がり、緊張を紛らわすためにスマホを取り出せば数件の未読メッセージ。
開けばそれは谷地ちゃんからで、卒業式の後バレー部の5人と一緒に撮った写真が添付されていた。

このメンバーと仲良くなれてよかったな。
そう思っていればかちゃりとバスルームの扉が開いた。

「ん?どうしたの?」

用意されていたらしいバスローブを着た明光さんが私に近づく。

『卒業式の後にバレー部の5人と写真撮ったんです。』

そう言って見せれば明光さんはにこり笑った。

「夏乃ちゃんもちゃんと笑える場所ができたみたいだね。」


確かに、この5人と一緒にいる時は他の人たちといる時とは違う気持ちだった。
高校で両親がいないことを知っているのも、明光さんと付き合ってるのも知ってるのはこの5人だけ。

それだけ特別だったんだと改めて感じ、私はくすり、笑った。


私がスマホの写真を見ながら笑っていることに気づいたのか、明光さんがそっと私を後ろから抱きしめる。

『…明光さん?』

「ね、夏乃ちゃん?
卒業したことも、友達ができたことも嬉しいんだけど…
今だけは俺のこと考えて欲しいな。」

その言葉におさまっていた心臓がうるさいくらいに音を奏で始めた。

『え…と……その…






お風呂はいってきますっ!』

どくどくとうるさい心臓をなだめるため、私は逃げるようにバスルームに走りドアを閉めた。


ドアの外からは小さな笑い声が聞こえた気がした。



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