第27章 『貴方だけしか見えません。』月島明光 R18
「卒業おめでとう。」
優しい声が上から降ってくる。
ぐずぐずと泣きながら顔を上げれば優しく笑う明光さん。
『な…で…?』
「俺が祝いたかったから。…まあ、蛍がいるから最悪保護者として紛れられるし…」
間に合ってよかった…
そう呟いた声でピンと来た。
さっきの蛍くんのつぶやきはこれのことか。
そんなことを思いながら明光さんに抱きついていると、明光さんが私から離れた。
「夏乃さんのご卒業おめでとうございます。」
深くお辞儀をした先には私のおばあちゃん。
「やっと肩の荷が下りたよ。」
少しほっとしたように笑うおばあちゃん。
そんなおばあちゃんにふ、と真剣な顔をした明光さんが私の肩を引き寄せ、言った。
「本日、夏乃さんをお預かりしてもよろしいですか?」
「ああ、行ってらっしゃい。卒業したから門限なんてないからね?」
そう笑いながらウインクをしたおばあちゃんは、なんだか一回り小さく見えて、止まったはずの涙がぽろり、こぼれた。