第27章 『貴方だけしか見えません。』月島明光 R18
玄関で内履きを鞄にしまうとおばあちゃんを探す。
着物を着たおばあちゃんはすぐに見つかった。
『おばあちゃん帰ろう?』
おばあちゃんにそう話しかけた時、周りの生徒や保護者がざわざわと騒ぎ始める。
みんなの目線は校門前に集中している。
私もそちらに目線を送れば、その人はいた。
スーツを着て大きな色とりどりの大きな花束を持った明光さんが。
目が離せない私の横でとんと背中を押したのはおばあちゃん。
「行きなさい。」
言葉が出なくてこくりと頷くと、私は走った。
仕事はどうしたの、とか
どんな顔をして花束を買ったのか、とか
みんなに見られて恥ずかしい、とか
言いたいことはたくさん。
でも、溢れる涙が言葉をさえぎる。
明光さんは私が泣きながら走ってきたことに一瞬驚いたようだが、すぐに笑顔で腕を広げ私を待つ。
大好きな大好きな明光さんの胸に私は飛び込んだ。