第26章 『貴方のことしか見えません。』 月島明光 R15
「顔洗って頭冷やしてくる。
本当に、ごめん。」
そう言って明光さんは部屋から出て行った。
明光さんがいない間に乱された服を直していると、ちらちらと目に入る小さな赤い痕に恥ずかしさを感じる。
極力見ないようにして着替えを終えた頃、明光さんが両手にマグカップを持って戻ってきた。
スーツから着替えたのか、Tシャツとジャージ、パーカーを羽織っている。
ベッド横に置かれたサイドテーブルにマグカップを置いた明光さんはベッドには座らず床に座った。
「ホットミルク、飲む?」
こくり、と頷くと私はマグカップをとり、一口口に含んだ。
「夏乃ちゃん…」
名前を呼ぶ明光さんの声はいつもより低い。
声の方を向けば、明光さんはがばりと頭を下げた。
「大切にしたいって言っておきながら酔って怖がらせてごめん…」
『明光さんっ⁈頭上げてっ⁈』
慌ててベッドから降り、明光さんの肩をとんとん叩くと、明光さんはゆるりと頭を上げた。
「俺が怖いんだったら…無理して俺のそばにいなくていいよ?」
明光さんのすごく悲しそうな瞳に、私もちゃんと気持ちを話さなければと思う。
『あの…ね?
さっきは明光さんが明光さんじゃないみたいで怖かったの。
でも今は大丈夫。
いつもの私の大好きな明光さんだから、大丈夫。』
そっと、床に置かれた手に触れると明光さんは優しく握り返してくれた。