第25章 『きらきらの貴方。 』 月島明光
だれもいない高台の駐車場。
1度車を降りた月島さん。
1人になった車内で涙を拭いていれば、すぐに運転席の扉が開いた。
「はい。ペットボトルので悪いけど。」
すぐそこの自販機まで買いに行ってくれたのだろう。
あったかいミルクティーが手渡された。
お礼を言い一口飲めば涙で乾いた体にじんわりと染み渡る。
はふ…と息を吐けば、月島さんがぽんと頭を撫でる。
「それ…本命?」
カップケーキを指差しそう聞く月島さんは、私に優しげな笑顔を見せる。
こくり、頷くと月島さんはそっか…と呟き頭を撫でた。
ぐうううぅ
車の中に響き渡る重低音。
音の主を見れば、恥ずかしそうに目をそらす。
「練習の後だから…気にしないで?」
『…これ、食べます?』
差し出したのはカップケーキ。
驚いたような顔の月島さん。
「いや…それは…さすがに…」
『床…落ちちゃって…汚い…ですよね…』
そう言って袋を戻そうとするとカップケーキを持った手首を掴まれた。
「そうじゃなくて…夏乃さんが好きな人を思って作ったもの…俺なんかが食べていいのかなって…」
その真剣な顔に、俯きながら私も答えた。
『月島さんに…食べて…欲しいんです。』
伝わって欲しい、私の気持ち。
勇気を振り絞って伝えた。
でも、やっぱり伝わらない。
「ありがとうございます。でも…」
そう、私の元に帰ってくるカップケーキ。
『ちが…違うんです。』
「泣き止みましたね?帰りましょうか。」
違うんです。
あなたに気持ちを伝えたくて、あなたに食べてほしくて作ったんです。
どうやったら伝わるの?
どうやったら私の気持ち、わかってもらえる?
わからない。
わからない。
気持ちがまとまらないのに月島さんは車を発進させようとしている。
待って
待って
焦る気持ちは私に勇気を出させてくれた。