第23章 『五月雨の夜。』嶋田誠 R18
「よし。終わったよ?」
かちゃりと休憩室のドアが開き、顔をあげると、嶋田さんがにこりと笑う。
『あれ?もう1人のレジの人…』
「ああ、先に帰ったよ?今は夏乃ちゃんと俺だけ。
じゃあ、車行こうか。」
そう言って裏口に向かう嶋田さん。
うそっ!ちょっと待って⁈
今帰ったらここに来た意味ないじゃない⁈
私、何も伝えてない!
なんて伝えたらいいだろう
こう伝えたら可愛いかな
予行演習で考えていた告白なんて頭から吹っ飛んだ。
私はとっさに嶋田さんに走って駆け寄り、背中に抱きついた。
『待って‼︎』
「夏乃ちゃん⁈」
行ってしまう。
伝えられなくなってしまう。
きっとこれを逃したら言えなくなってしまう。
そんなの嫌。
『好きっ。』
『嶋田さんが好き。』
遠くで雨の音が聞こえる。
梅雨のじめっとした空気が体にまとわりつく。
こくりっ
嶋田さんが唾液を飲み込む音が聞こえる。
「…夏乃ちゃんにこんなおじさんは似合わないよ。」
嶋田さんのお腹に回した手はそっと剥がされた。
そっとかがんで目線を合わせた嶋田さんは困ったように笑った。
「夏乃ちゃんには同い年くらいの男の方が似合ってる。」
やめて。
そんなこと聞きたくない。
「俺なんかより、もっといいヤツ見つけられるよ。」
そう言って嶋田さんは私の髪を撫でた。