第22章 『私のことを見てください。』月島明光
「兄ちゃんありがとうね。」
神社に着くと、月島くんはさっさと車を降り神社の方へと歩き出した。
「夏乃ちゃん。行こうか。」
すっと手を差し伸べられにこりと笑う明光さん。
その手に私の手を乗せると、明光さんは手をぎゅっと握り神社へと歩き出した。
「あ。」
歩きながら明光さんが唐突に声を上げる。
『どうしたんですか?』
明光さんの方を向けば、明光さんはおっきな手をぽんと頭に乗せた。
「きょうの服装、可愛い。」
…不意打ちなんて卑怯だ。
そりゃあ、彼氏とのデート。
お洒落しないわけがない。
淡い水色のオフショルダーのニットに裾にレースの付いたネイビーのスカートに黒のタイツ。
ベージュのダッフルコートと、同色のムートンブーツ。
いつもバイトで着る動きやすい私服とは違う、ふわふわの可愛い服。
すごく、すごく悩んで決めた服。
「可愛いんだけどさ…」
明光さんはおもむろに自分につけていたマフラーを外すと、くるりと私の首に巻いた。
「これでよし。こっちのほうが可愛い。」
ふわり、香る明光さんの香り。
明光さんにぎゅっと抱きしめられているような感覚に、くらり、めまいがしそう。
『あ…りがとう、ございます。』
嬉しくてにやけそうになる口元を私はマフラーで隠した。