第22章 『私のことを見てください。』月島明光
そして、12月31日。
『行ってきます。』
正月のお手伝いを終え、家を出た時間は午後10時半。
おばあちゃんはお隣のお友達のおばあちゃんと一緒に紅白を見ながらお酒を飲むらしい。
…元気だね、おばあちゃん。
「いつも送ってくれる人だろう?行っておいで。
たまには子供らしく遊んでおいで?
あ、泊まるんなら連絡いらないから。
明日は隣の明美さんと朝から初売りに行くから家空けるからね?」
『わかった。泊まりにはならないと思うけど…
おばあちゃんも気をつけてね?』
そんな話をし、家を出れば明光さんの車が家の前に止まってるのが見えて思わず走り出す。
数十メートルの距離がもどかしい。
早く会いたい。
階段を駆け下り車まで走れば中から明光さんがドアを開けてくれた。
「そんなに急がなくて大丈夫だよ。」
『でも…』
会いたかったの。
明光さんに。
助手席に座りシートベルトをしめると明光さんはにかり、笑う。
「そんなに俺に会いたかったの?」
そんな問いかけにこくりと頷けばそっと頭を撫でられる。
「俺も…会いたかったよ。」
「すいませーん。イチャイチャしてないで車出してくださーい。」
突然後ろの席から声がしてびっくり。
後ろを振り向けば男子バレー部、背番号11番、そして、隣のクラスの…
月島蛍…くん。
『月島くん…こんばんは。』
「コンバンハ。椎名サン。デートの邪魔してゴメン。」
「蛍…いたんだったな…」
明光さんを睨めば、明光さんは苦笑い。
「バレー部での初詣に送って行ってくれるって言ったのは兄ちゃんデショ?」
「そうだったな…」
明光さんは運転席からごめんのジェスチャーを送ってくる。
『じゃあ、出店で何か買ってください。それでいいです。』
そう、私が言えば明光さんはにかりと笑って了解。と呟いた。