第22章 『私のことを見てください。』月島明光
「31日の夜、一緒に初詣行かない?」
バイトが終わったあと、家まで車で送ってもらう途中。
信号待ちのタイミングでそう誘われた。
『バイトは休みなので…大丈夫です。でもお正月の準備するっておばあちゃんに言ってるので…日付超えるぎりぎりになるかもしれないんですが、それでもいいですか?』
問うように明光さんに言うと頭をぽんぽんと撫でてくれる。
「じゃあ実家で紅白見ながらまってるよ。準備終わったら連絡頂戴?」
『…はい。』
烏野高校から歩いて30分のところにある私の家。
おばあちゃんと2人暮しのマンションの前に車が止まった。
「着いたよ?」
『ありがとうございます。』
シートベルトを外せばふ、と室内灯が遮られ、思わず明光さんのほうを向く。
ちゅっ。
小さなリップ音を立て明光さんの唇が私の唇に触れる。
何度しても慣れない。
明光さんに触れるだけで心臓がぎゅっとなる。
苦しい。
だけど嬉しい。
真っ赤な顔で明光さんを見ればいたずらが見つかった子供のような顔で笑いながらぽんぽんと頭を撫でる。
『気をつけて帰ってくださいね?』
「うん。おやすみ。」
『…おやすみなさい。』
ぺこり、お辞儀をして車を出る。
中で手を振ってくれる明光さんに手を振り返すと、車はエンジン音と共に進み出す。
車が次の角を曲がったのを確認すると、私ははあと息を吐きマンションの階段を上る。
1番端の一番日差しが入る部屋。
それが私とおばあちゃんの住む部屋。
鍵を開けて部屋に入れば台所には今日の夕飯のメモ。
”今日はカレーです。温めて食べなさい。”
おばあちゃんに言わなきゃなぁ、明光さんと出かけること。
私はコンロの火をつけると、私は自室にカバンを置きに入った。