第21章 『 ホントの私を見てください。 』月島 明光
『椎名…ってだれですか。』
振り返らずに答えた。
それしかこの状況を打破することができない。そう思ったから。
ばれる前にこの場を離れたい。
でも動こうとしても、足が床にくっついたみたいに動けない。
どうしよう。
どうしよう。
そう悩む間にも靴音が近づいて、ぴたり、私の後ろで止まった。
「見間違え…じゃないと思うんだけどな。椎名さん。」
どうして…?
どうしてそんな優しい声で話しかけるの?
『…どうして……わかったんですか?』
そう問いかければくすり、と暖かく笑う声。
「わからないわけないよ。だって椎名さんは椎名さんだから。」
そう言いながら、明光さんは私の正面に回った。
「どんな服装だって、どこにいたって俺は、椎名さんだったら一発で見つけてみせるよ。」
「だから、泣かないで?」
明光さんが、いつのまにか私の頬を流れていた涙をそっと指で拭った。